愛犬が歳を重ねると、多くのシニア犬の記事は、老化のサインの一覧や、かかりやすい病気、介護やフードの切り替えを教えてくれます。どれも大切なことです。けれども、いっしょに暮らす人が最初に戸惑うのは、たいてい病名ではありません。「名前を呼んでも来ない」「これまで通じていた合図が、通じなくなった」――そんな、日々の”通じ合い”のほうです。それを「わがままになった」と受け取ったり、すぐに「認知症だ」と決めつけたりする前に、まず考えたいことがあります。目が見えにくく、耳が遠くなり、体が疲れやすくなった愛犬に、人のほうが伝え方を組み替える。それは、ドッグトレーナーの仕事の一つです。
この記事は、シニア期を「病気と介護の一覧」としてではなく、「最後まで通じ合うための、関わりの再設計」として整理します。病気の診断や薬、食事の細かい話は、かかりつけの獣医師の領域です。ここでは、見えにくくなった犬への合図の変え方、聞こえにくくなった犬との伝え方、疲れやすくなった犬とのトレーニングや遊びの組み替え、そして板橋区に多い集合住宅での環境の整え方までを、獣医団体やドッグトレーナーの一次情報をもとにお話しします。犬の行動を理解する土台は、犬のしつけ入門にもまとめています。なお、体調や認知の変化で気になることがあれば、早めにかかりつけの動物病院や、動物の行動を専門にみる獣医師(獣医行動科)に相談してください。
「通じなくなる」のは、わがままでも、すぐ認知症でもない
「呼んでも来ない」「反応がにぶい」「そっけなくなった」――シニア期に増えるこうした変化を、人はつい「気むずかしくなった」「言うことをきかなくなった」と受け取りがちです。けれども、その裏には、体や感覚、あるいは認知の変化がかくれていることがよくあります。まず、決めつけずに切り分けるところから始めます。
「呼んでも来ない・反応がにぶい」の正体
愛犬が呼んでも来なくなったとき、理由はいくつもあります。耳が遠くなって声が届いていない、目が見えにくくてあなたの姿や手の合図が分からない、関節が痛くて動くのがおっくう、認知の変化で「呼ばれた」ことが行動に結びつかない――どれも「わがまま」ではありません。とくに見落とされやすいのが、痛みです。VCA動物病院は、加齢にともなう行動の変化のいくつかは正常ではなく、痛みから来ていることがある、と説明しています。さらに、以前は玄関まで毎回出迎えていた犬が出迎えなくなったら、それは痛みのサインのことがある、とも述べています。そして犬は痛みをかくす傾向があるので、こうした行動の手がかりを見のがさないように、としています。
まず、獣医で切り分ける
「見えない・聞こえない・痛い・認知の変化」のどれなのかは、家庭での見た目だけでは分けきれません。VCA動物病院は、迷ったら診てもらうこと、と勧めています。呼んでも来ない、段差の前で立ち止まる、寝てばかりいる、といった変化に気づいたら、「歳のせい」で片づけず、まずはかかりつけの動物病院で、目・耳・関節・全身の状態をみてもらいます。原因が分かれば、家庭での関わり方も、そこに合わせて組み替えられます。この記事の後半で紹介する合図や環境の工夫も、獣医師の診断とセットにすると、いちばん役に立ちます。
「いつからシニア」は、数字でなく変化で気づく
「何歳からシニアか」は、犬の大きさで違います。アメリカンケネルクラブ(AKC)は、猫と小型犬はおよそ7歳でシニアと見なされることが多い一方、大型犬は5〜6歳ごろにはシニアとされる、と説明しています。大型犬ほど速く歳をとり、小型犬は歳のとり方がゆるやかで、シニア期も長くなります。トイプードルのような小型犬は、7歳を過ぎたころから「そろそろ」と気にかけつつ、実際には年齢の数字よりも、”通じ方の変化”――呼びかけへの反応、段差での動き、遊びへの興味――で気づくのが、いちばん実際的です。小型犬・トイプードルの暮らしと健康の要点は、板橋区のトイプードルにまとめています。
目が見えにくい犬へ ―「見せる」から「声・触れる・におい」へ
視力の低下は、シニア犬によく起こる変化です。AKC(獣医師の解説)は、加齢による視力の低下は年単位でゆっくり進み、目の中がにごる核硬化症は8歳を過ぎた犬によく見られる、と説明しています。ゆっくり進むぶん、気づきにくく、人は「急に動きがにぶった」と感じます。ここで大事なのは、これまで”見せて”伝えていた合図を、声と、体に触れること、においへ組み替えることです。
ハンドサインが届かないなら、声とタッチの合図へ
目が見えにくくなると、これまで通じていた手の合図(ハンドサイン)や、あなたが手招きする姿が、犬に届かなくなります。AKCは、視力を失った犬は、ほかの感覚を使ってそれを補える、と説明しています。人の側は、合図を”見せる”ものから、声のかけ声や、体にそっと触れる合図へ移していきます。たとえば「おいで」を、決まった言葉と、いつも同じ場所(肩や胸のあたり)へのやさしいタッチで伝えるようにすると、見えなくても通じます。犬の嗅覚は、目や耳より最後まで力強く残りやすいので、においを使った遊びや合図も助けになります。AKCは、においを使うノーズワークのような遊びは、見えない犬にとても向いている、と挙げています。
家具を動かさない ― 犬の「覚えている地図」を守る
目が見えにくい犬には、環境を”覚えている地図”のまま保つことが、何よりの助けになります。AKCは、家具を同じ場所に置いたままにして、家の中を動きやすくしておくこと、そして視力が落ちても毎日のルーティンを変えないこと、と勧めています。模様がえや、新しい家具の持ちこみは、犬にとって突然の障害物になります。滑りやすい床にはカーペットやマットを敷き、階段の上と下には、足ざわりの違うマットを置いておくと、犬は「ここが端だ」と気づけます。とがった家具の角には緩衝材をつけ、ぶつかってけがをしやすいものは、犬の動線から片づけておきます。いつもの配置、いつもの道すじが、見えない犬の安心を支えます。
驚かせない ― 近づく前に、声をかける
見えない犬は、不意に近づかれたり、いきなり触られたりすると、おどろいてしまいます。AKCは、警告なしに近づくと、犬はかんたんにおどろいてしまう、と注意しています。だから、なでる前・近づく前に、まず声をかけて「今からいくよ」と気配を伝えます。犬が身をかたくする、顔をそむける、といったサインを出したら、それは「今の近づき方は苦手」という合図です。こうした不快やストレスのサインを行動から読むこつは、犬のカーミングシグナルにくわしくまとめています。おどろかせない接し方は、次に見る「耳が聞こえにくい犬」でも、同じように大切になります。
耳が聞こえにくい犬へ ―「声」から「見える合図・振動」へ
聴力の低下も、シニア犬に多い変化です。AKC(ドッグトレーナーの解説)は、高齢の犬では、耳の中の神経の変性が原因のことが多く、変化はゆっくり、少しずつ進む、と説明しています。声で呼んでも来ないのは、無視でも反抗でもなく、単純に聞こえていないことがよくあります。ここでは、”声”で伝えていたことを、”見える合図”と”振動”へ組み替えます。
呼んでも来ないのは、叱る前に ― 手と振動で伝える
耳が遠くなった犬を、声で何度も呼んで、来ないからと叱るのは、犬にとって、なぜ叱られたのか分からず、つらいだけです。AKCは、聞こえなくなっていく犬には、代わりにハンドサインを教えることで、目で見て分かるように伝えられる、と勧めています。「おいで」「まて」などを、決まった手の形で見せて教え直します。犬がこちらを見ていないときに振り向かせたいときは、AKCは、床を強く踏んで振動をつくる方法を挙げています。フローリングや床ごしに伝わる振動で、犬はこちらに気づきます。部屋の照明をひと呼吸つけて消す、といった光を合図に使う人もいます。声が届かなくても、伝える手だては残っています。
寝ている犬を、いきなりさわって起こさない
聞こえない犬は、寝ているあいだに突然さわられると、びっくりして、とっさに口が出てしまうことがあります。これは、その子が”こわい犬”だからではなく、おどろいた反射です。AKCは、寝ている犬を起こすときは、まず鼻先に手をかざして、においで気づいてもらい、起きたらすぐにごほうびをあげる、という方法を紹介しています。近づくときは、AKCが勧めるように、重い足音で歩いて、床の振動で自分の存在を先に伝えます。家族みんな、とくに子どもにも、「寝ているその子を、後ろからいきなりさわらない」を約束ごとにしておくと、思わぬ事故をふせげます。
報酬ベースで、新しい合図を教え直す
耳が遠くなってからでも、犬は新しい合図を学べます。AKCのデフ犬(耳の聞こえない犬)のトレーニングでは、まず犬が自分からこちらを見たときに、そのつどおやつや遊びでほうびを与え、アイコンタクトを育てることから始めます。正しくできた瞬間を、決まった手の形(親指を立てるなど)で「それ、正解」と伝え、すぐにほうびへつなげます。体の同じ場所(肩やおしりの上)へのタッチを、「振り向いて」の合図として教えることもできます。こうした教え直しは、すべて報酬にもとづく方法です。米国獣医動物行動学会(AVSAB)は、すべての犬のトレーニングで、報酬にもとづく方法を支持し、嫌悪的な手法が必要だという証拠はない、と述べています。シニアの学び直しでも、痛みや威嚇で押さえるのではなく、できたことをほめて伸ばします。報酬ベースの教え方の土台は、犬のしつけの手法にまとめています。
すぐ疲れる犬へ ― トレーニングと遊びを「組み替える」
シニアになると、長く歩けない、立ちっぱなしがつらい、すぐ休みたがる、という変化が出てきます。だからといって、頭や体を使うことをやめてしまうと、退屈から気持ちが沈んだり、体力がさらに落ちたりします。大事なのは、やめることではなく、”組み替える”ことです。
「老犬は覚えられない」は、誤解
「歳をとった犬は、新しいことを覚えられない」と言われることがあります。実際には、そうではありません。AKCは、シニア犬にとっても遊びは心の刺激になり、認知の働きを良い状態に保ち、若々しさを保つのに役立つ、と説明しています。前の章で見たように、耳が聞こえなくなった犬でも、新しいハンドサインを学べます。学び方を、その子の今の体力に合わせて組み替えれば、シニアでも十分に学べます。こつは、一回を短く、成功しやすくして、体に負担をかけないこと。5〜10分ほどの短いトレーニングを、一日に一〜二回。できたらすぐにほめる。この積み重ねが、頭の張りと、人との通じ合いを保ちます。
高く跳ばせない・長く走らせない ― においの遊びへ
体への負担を減らすには、遊びの中身も組み替えます。高くジャンプさせる、長く走らせる、といった遊びより、鼻を使う遊びが、シニアには向いています。AKCは、耳が聞こえにくいシニア犬でも、鼻を使えば、あなたを探し当てる遊びに参加できる、と挙げています。おやつを部屋に隠して探させる「宝探し」や、においをたどるノーズワークは、体への負担が軽く、頭をよく使い、見つけたときの達成感が自信につながります。AKCは、最初は近くの見つけやすい場所に隠し、少しずつ難しくしていくとよい、と説明しています。滑る床の上で、むりに立たせ続けないなど、体に負担をかけない工夫も合わせます。犬の”狩りの連鎖”の得意を活かした、おもちゃや遊びの選び方は、犬のおもちゃの選び方にまとめています。
できなくなった行動を、叱らない
以前はできていた「おすわり」をしぶる、トイレを失敗するようになった――こうした変化を、「わざと」「しつけが崩れた」と受け取って叱るのは、犬にとってつらいだけです。おすわりをしぶるのは、関節が痛くて座る姿勢がつらいことがあり、トイレの失敗は、体や認知の変化のサインのことがあります。VCA動物病院が述べるように、犬は痛みをかくすので、行動の変化は、体からのサインのことがあります。叱るのではなく、「なぜできなくなったのか」を、獣医師といっしょにみていきます。トイレの失敗が続くときは、次の章でふれる認知の変化とも重なるので、早めの受診が役立ちます。
板橋のマンションで「通じ合い」を保つ、環境の組み替え
合図や遊びを組み替えても、暮らしの土台となる住まいが、シニアの体に合っていないと、日々の負担は減りません。板橋区に多い集合住宅の暮らしを想定して、環境の組み替えを整理します。板橋区の住まいの未来ビジョン2025 住宅白書(平成25年住宅・土地統計調査)によれば、板橋区で人が住んでいる住宅のうち、共同住宅(マンションやアパートなど)は78.3パーセントを占めています。マンション暮らしならではの、滑る床・段差・エレベーターに、シニアの視点で目を向けます。
滑る床・段差・階段・エレベーター
フローリングは、シニア犬の関節に負担をかけます。VCA動物病院は、変形性関節症は8歳を過ぎた犬の80パーセントに見られるとし、滑らない床の面をつくること、そして段差の上り下りや、家具への飛び乗り・飛び降りをためらう様子は、その痛みのサインだと説明しています。滑りやすい床には、カーペットや滑り止めのマットを敷き、犬がふんばれるようにします。ソファへの飛び乗りは、スロープや低い踏み台に替えます。玄関の段差や階段は、無理をさせず、抱えて移動する場面も出てきます。エレベーターの乗り降りは、扉が閉まるタイミングで急かされやすいので、犬のペースで、落ち着いて乗り降りできるようにします。
夜と室温 ― 見えにくさと、冷え
夜と室温も、シニアには大切です。目が見えにくい犬は、暗い時間帯にいっそう不安になりやすいので、足元をてらす小さな明かりを用意すると、動きやすくなります。AKCが述べるように、感覚が衰えていく犬は、それに慣れるあいだ、不安を感じることがあります。冷えは関節のこわばりにつながるので、寝る場所を暖かく保ちます。寒暖差の大きい季節のケアや、冬の暮らしの工夫は、犬の冬のケアにまとめています。
寝床と動線 ― いつも同じ、静かな場所に
寝床は、シニアの一日の多くを過ごす場所です。VCA動物病院は、やわらかく、クッションのきいた寝床を用意することを勧めています。関節に負担のかからない、体を預けられる寝床を、静かで、家族の気配が感じられる場所に置きます。トイレや水飲み場までの動線は、短く、段差なく、いつも同じにしておくと、目や足がおとろえても迷いません。集合住宅で犬と快適に暮らす基本は、マンションで犬と暮らすにまとめています。
夜鳴き・徘徊・トイレの失敗は「行動で読む」 ― 認知の変化と獣医連携
シニア期の後半に出てくることがあるのが、認知機能の変化です。夜に鳴く、あてもなく歩き回る、家の中で迷う――こうした変化は、しつけの崩れではなく、脳の加齢による変化のサインのことがあります。ここは、獣医師と連携する場面です。
認知機能の変化のサイン(DISHAA)を、行動で見る
VCA動物病院(獣医行動学の専門医による解説)は、犬の認知機能不全のサインを「DISHAA」という枠組みで整理しています。見当識の変化(見慣れた場所で迷う、知っている人が分からない、ドアの反対側へ行く)、人や同居動物とのかかわり方の変化、睡眠と目ざめのリズムの乱れ(昼に寝て、夜に歩き回る)、家の中での粗相、活動の変化(遊びへの興味が減る、落ち着けない、同じ行動をくり返す)、そして不安の高まり――これらがサインです。VCAは、こうしたサインに気づいたら、すぐにかかりつけの獣医師に伝えること、と勧めています。加齢とともに増え、11〜12歳の犬で28パーセント、15〜16歳では68パーセントの飼い主が、少なくとも一つのサインに気づいた、と報告されています。自己判断せず、早めに獣医師、または動物の行動を専門にみる獣医師(獣医行動科)へつなぎます。
夜鳴き・徘徊は、しつけで「直す」ものではない
夜鳴きや徘徊を、叱ってやめさせようとしても、うまくいきません。VCA動物病院は、認知機能の変化は、人のアルツハイマー病と同じように、進んでいくもので、元には戻らない、と説明しています。だからこそ、しつけで”直す”のではなく、その子が過ごしやすいように、関わりと環境を整えます。昼間に、においの遊びや短い散歩で、ほどよく頭と体を使ってもらい、生活のリズムをつくると、夜に落ち着きやすくなります。夜は、迷わないように足元の明かりをつけ、安心できる寝床を整えます。薬や治療が助けになる場面もありますが、それは獣医師が判断することです。人にできるのは、責めずに、その子の変化に寄りそって、暮らしを組み替えることです。
「歳のせい」で片づけない ― 受診の目安と、記録
「もう歳だから」で片づけてしまうと、治せる痛みや、遅らせられる変化を、見のがすことになります。呼んでも反応がにぶい、夜鳴きが増えた、粗相をするようになった、歩き方が変わった――こうした変化に気づいたら、いつ・どんなときに・どのくらいの頻度で起きているかを、メモや動画で記録しておきます。受診のときに、その記録があると、獣医師は状態をつかみやすくなります。VCA動物病院が勧めるように、迷ったら、まず診てもらう。シニア期は、半年に一度ほどの定期的な健康チェックを、痛みや認知の変化に早く気づくきっかけにできます。
最後まで通じ合うために ― 生活の質と、日々の整え方
シニア期は、できないことが増える時期であると同時に、その子と静かに向き合える時期でもあります。最後に、日々の暮らしの整え方を、二つにしぼってまとめます。
「今できること」を、活かす
衰えていくところに目を向けるより、「今できること」を活かすほうが、その子も人も楽になります。目が見えにくくても、鼻はよく利きます。耳が遠くても、においや振動は伝わります。においの宝探しや、短い時間のやさしいトレーニングは、体に負担をかけずに、頭の張りと、人との通じ合いを保ちます。AKCが述べるように、遊びは、シニア犬の認知の働きを保つのに役立ちます。迎えたばかりの子犬に、安心できる環境と生活リズムをつくる話は、子犬を迎えた最初の1週間にまとめています。人生の入り口と出口で、してあげたいことは、実はよく似ています――安心できる環境と、その子のペースを大切にすることです。
変化を記録し、家族と獣医で分かち合う
シニア期の変化は、ゆっくり進むぶん、毎日いっしょにいると気づきにくいものです。体重、食欲、歩き方、寝ている時間、トイレの様子――こうしたことを、ときどき記録しておくと、変化に早く気づけます。そして、その記録を、家族みんなと、かかりつけの獣医師、そして必要ならトレーニングの専門家と分かち合います。だれか一人が抱えこまず、みんなで、その子の”通じ合い”を支えます。人が伝え方を組み替え続けるかぎり、シニアになっても、その子との会話は続きます。
よくある質問
Q. シニア用のフードには、いつから切り替えればよいですか?
フードの切り替え時期や中身は、その子の体格・体調・持病によって違うので、かかりつけの獣医師に相談して決めるのが、いちばんです。一般には、小型犬は7歳ごろが一つの目安ですが、大切なのは年齢の数字よりも、体重の変化や活動量、健康チェックの結果です。自己判断で急に変えず、獣医師と相談しながら、その子に合ったものを選びます。
Q. 老犬に新しいしつけをするのは、酷ではありませんか?
そんなことはありません。AKCが述べるように、遊びやトレーニングは、シニア犬の心の刺激になり、認知の働きを保つのに役立ちます。大切なのは、内容を、その子の今の体力と感覚に合わせて組み替えることです。短く、成功しやすく、体に負担をかけない。できたらすぐにほめる。この形なら、学び直しは、その子にとって楽しい時間になります。むずかしい新芸を覚えさせることではなく、通じ合いを保つことが目的です。
Q. 夜鳴きは、しつけで直りますか?
夜鳴きや徘徊は、認知機能の変化のサインのことがあり、その場合は、しつけで”直す”ものではありません。叱るのではなく、昼間の活動でリズムを整え、夜は安心できる環境をつくって、その子が過ごしやすいようにします。あわせて、早めにかかりつけの獣医師に相談してください。強い不安やこわがりが背景にあることもあるので、行動の変化を記録して、獣医師に伝えると役立ちます。
Q. どこまで家庭でみて、いつ専門家に相談すべきですか?
日々の中で、合図を組み替える、環境を整える、といったことは、ご家庭でできます。一方で、痛みや、認知の変化、原因の分からない不調は、かかりつけの動物病院へ。強い不安やこわがり、攻撃が続くときは、動物の行動を専門にみる獣医師(獣医行動科)へ。そして、シニアに合わせた暮らしやトレーニングの組み替えに迷ったら、トレーニングの専門家に相談してください。板橋区を中心に出張型のドッグトレーニングを行うK9 Harmonyでは、ご自宅にうかがって、その子の見え方・聞こえ方・体力に合わせた関わり方を、いっしょに組み立てます。ご相談はご予約・お問い合わせからどうぞ。
まとめ
シニア犬との暮らしは、病気と介護の一覧をこなすことではありません。目が見えにくく、耳が遠くなり、すぐ疲れるようになった愛犬に、人のほうが伝え方を組み替える――それが、最後まで通じ合うための再設計です。見せる合図が届かなくなったら、声とタッチ、においへ。声が届かなくなったら、ハンドサインと振動へ。環境は、家具を動かさず、滑らない床と、安心できる寝床に整えます。「呼んでも来ない」「夜に鳴く」を、わがままや、ただの老化で片づけず、痛みや認知の変化のサインとして行動から読み、早めに獣医師へつなぎます。そして、遊びとトレーニングは、やめるのではなく、その子の体力に合わせて組み替える。人が伝え方を変え続けるかぎり、その子との会話は、シニアになっても続きます。見え方・聞こえ方・体力に合わせた暮らしの組み立ては、板橋で出張トレーニングを行うK9 Harmonyにご相談ください。体調や認知の変化で気になることは、かかりつけの動物病院や、動物の行動を専門にみる獣医師(獣医行動科)へどうぞ。加齢にともなう記憶や学習の変化の基礎は犬の記憶の仕組みにまとめています。
参考情報
この記事は、次の獣医団体・獣医行動学の一次情報と、ドッグトレーナーの専門的な解説、行政の公式情報をもとに作成しました(いずれも2026年7月に参照)。病気の診断や治療、薬、食事の詳細は、獣医師の領域です。体調や認知の変化で気になることは、かかりつけの動物病院や、動物の行動を専門にみる獣医師(獣医行動科)に相談してください。
出典一覧(クリックで開く)
- アメリカンケネルクラブ(AKC)「How Old Is My Dog in Human Years? Dog Age Calculator」 https://www.akc.org/expert-advice/health/how-to-calculate-dog-years-to-human-years/(2026年7月参照)
- AKC「Age-Related Vision and Hearing Loss in Dogs」(Jeff Grognet, DVM) https://www.akc.org/expert-advice/health/age-related-hearing-and-vision-loss-in-dogs/(2026年7月参照)
- AKC「Supporting a Blind Dog: Helping Dogs Adjust to Vision Loss」(Sassafras Patterdale, CPDT-KA, CTDI) https://www.akc.org/expert-advice/health/supporting-blind-dogs-how-to-adjust/(2026年7月参照)
- AKC「Hearing Loss in Senior Dogs: Signs, Symptoms, Management」(Stephanie Gibeault, MSc, CPDT) https://www.akc.org/expert-advice/health/hearing-loss-senior-dogs/(2026年7月参照)
- AKC「Deaf Dog Training: How to Train and Care for a Deaf Dog」(Stephanie Gibeault, MSc, CPDT) https://www.akc.org/expert-advice/training/how-to-train-a-deaf-dog/(2026年7月参照)
- VCA Animal Hospitals「How to Recognize Pain in Aging Dogs」(Robin Downing, DVM, CVPP ほか) https://vcahospitals.com/know-your-pet/behavior-changes-and-pain-in-aging-dogs(2026年7月参照)
- VCA Animal Hospitals「Behavior Counseling ― Senior Pet Cognitive Dysfunction」(Ellen Lindell, VMD, DACVB/Debra Horwitz, DVM, DACVB/Gary Landsberg, DVM, DACVB) https://vcahospitals.com/know-your-pet/behavior-counseling-senior-pet-cognitive-dysfunction(2026年7月参照)
- AKC「Best Toys and Games for Senior Dogs」(Kaitlyn Arford) https://www.akc.org/expert-advice/lifestyle/toys-and-games-for-senior-dogs/(2026年7月参照)
- American Veterinary Society of Animal Behavior (AVSAB)「Position Statement on Humane Dog Training」(2021) https://avsab.org/wp-content/uploads/2021/08/AVSAB-Humane-Dog-Training-Position-Statement-2021.pdf(2026年7月参照)
- VCA Animal Hospitals「Arthritis in Dogs」(Malcolm Weir, DVM, MSc, MPH/Ryan Llera, BSc, DVM/Robin Downing, DVM) https://vcahospitals.com/know-your-pet/arthritis-in-dogs(2026年7月参照)
- 板橋区「住まいの未来ビジョン2025 住宅白書」(平成25年住宅・土地統計調査) https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/122/attach_90477_11.pdf(2026年7月参照)