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犬の無駄吠えはなぜ? 理由と対策 ― 「無駄」な吠えはない

「うちの子は無駄吠えがひどくて」という相談はとても多いものです。けれど、結論からお伝えすると、犬にとって「無駄」な吠えはありません。吠えは犬のことばであり、要求・警戒・不安・退屈など、その子なりの理由が必ずあります。だからこそ、声を張りあげて黙らせるよりも、なぜ吠えているのかを見て、その原因に手を当てるほうが、長い目で見て解決に近づきます。

この記事では、犬が吠える理由と対策を、動物行動学と獣医団体の情報をもとに整理します。吠えがコミュニケーションであること、おもな理由をタイプ別に読み解くこと、「やめさせる」前に引き金を観察すること、罰や吠え防止グッズに頼らない向き合い方、理由べつの具体策、体調や加齢が関わる吠え、そして吠えにくい暮らしの作り方まで、順に見ていきます。最後に、飼い始めの方からよく出る質問にも答えます。

はじめにお伝えしておきたいのは、急に吠えが増えた、いつもとちがう声で鳴く、といったときの見きわめは、動物病院の役割だということです。この記事は毎日の関わり方を整えるためのもので、診断や治療の代わりにはなりません。気になるようすがあれば、様子を見すぎず、早めにかかりつけへ相談してください。吠えの出方や向き合い方は、犬種・年齢・性格・暮らしの環境によって大きくちがいます。自分の犬に合わせて読み替えてください。

マンションなど集合住宅で暮らす犬は、近隣への配慮もあって、吠えに悩みやすいものです。インターホンや廊下の足音、外を通る人や犬。引き金が多い環境だからこそ、叱って抑えるよりも、刺激の整え方と関わり方で減らしていく視点が役に立ちます。近隣への配慮そのものはマンションで犬と暮らすにまとめています。この記事は、その土台になる「なぜ吠えるのか」を扱います。

吠えは犬のことば ―「無駄吠え」に見える吠えにも理由がある

「無駄吠え」という言葉は広く使われますが、犬の側に立つと、吠えに無駄はありません。吠えは、犬が自分の状態や要求を伝えるためのコミュニケーションです。まずはこの前提を押さえると、向き合い方が変わってきます。

吠えは正常なコミュニケーション

コーネル大学獣医学部は、犬は仲間どうしでも人とのあいだでも、伝えるために吠えると説明しています。アメリカンケネルクラブ(AKC)も、犬は体の動きやにおい、そして吠え・うなり・鳴き声といった声を使って、さまざまに気持ちを伝えると述べています。声だけでなく、体のこわばりや尾の動き、耳の向きとあわせて見ると、その吠えがどんな気持ちから出ているのかが読み取りやすくなります。吠えは、しっぽをふることや耳の向きと同じように、犬の自然な表現のひとつです。それを頭ごなしに止めることは、犬の「伝えたい」を封じることにもなります。完全にゼロにするものではなく、理由に応じて減らしていくもの、ととらえると無理がありません。

「無駄」な吠えはない ― 研究が示すこと

吠えに意味があることは、研究でも示されています。ポングラーツらの研究(2005年)では、いろいろな場面で録音した犬の吠えを人に聞かせたところ、人は偶然をはるかに上回る確率で、その吠えがどんな場面のものかを当てられました。さらに、吠えの感じ方は、声の高さ(周波数)や吠えと吠えのあいだの間隔と関係していました。AKCも、来客のチャイムに対する吠えは、遊びやひとりのときの吠えよりも低く荒い声になり、低く荒く間隔が短いほど犬は深刻だと説明しています。同じ吠えでも、場面によって声の高さや強さ、間の取り方が変わり、人はそれを手がかりに状況を読み取れるのです。逆にいえば、飼い主が「いつもとちがう吠え方だ」と感じたときは、犬の状態がふだんと変わっているサインです。声色の変化に気づけることは、体調や不安に早く気づく手がかりにもなります。これは「吠えには意味がある=無駄な吠えはない」ことの裏づけです。同じ犬でも、要求のとき・警戒のとき・不安のときで吠え方はちがいます。だからこそ、声を一律に「無駄」と決めつけず、まず「なぜ」を読み取ることが出発点になります。

犬はなぜ吠えるのか ― おもな理由を読み解く

吠えの理由は一つではありません。獣医団体や専門機関は、いくつかの代表的なタイプに分けて説明しています。分け方は機関によって少しちがいますが、大きくは「外に向けた吠え」と「内側の状態から出る吠え」に整理できます。自分の犬がどのタイプに近いかを知ることが、対応の第一歩です。

外に向けた吠え ― 警戒・知らせる・あいさつ

米国動物虐待防止協会(ASPCA)は、自分の場所に近づく人・犬・動物に反応して吠えるタイプや、文脈に関係なくあらゆる物音や物影に吠える警報タイプを挙げています。前者は来客や外を通る人など「相手」に向いた吠え、後者は音や影など「きっかけ」に広く反応する吠えで、見分けると対応が変わります。来客やインターホン、外を通る人に反応する吠えは、集合住宅でとくに悩みになりやすいものです。いっぽうで、人や犬を見て、体がゆるみ、興奮して尾をふりながら吠えるのは、あいさつの吠えです。同じ「人を見て吠える」でも、体がこわばっているか、ゆるんでいるかで、警戒とあいさつは見分けられます。VCA動物病院も、見慣れない音・光景・においに出会ったときに吠える犬がいると説明しています。どれも「相手や状況に気づいて伝えている」吠えで、犬にとっては自然な反応です。叱って止めるより、何に反応しているのかを先に見ることが、対応の近道になります。来客のときに吠えと飛びつきが同時に出る場合は、犬の飛びつきもあわせてご覧ください。

内側の状態から出る吠え ― 要求・不安・退屈

ASPCAは、おやつ・おもちゃ・遊びなど、注目やごほうびを得ようとして吠えるタイプや、遊び相手に近づけない・つながれて動けないといった、思いどおりにならない場面で吠える欲求不満タイプを挙げています。コーネル大学獣医学部は、退屈や孤独も吠えの理由に含めています。ASPCAは、遊び相手に近づけない、つながれて動きが制限される、といった思いどおりにならない場面での欲求不満の吠えにも触れています。さらにVCA動物病院は、迷いや不安、欲求不満のときにも吠えが出ると述べています。これらは外の刺激というより、犬の内側の状態から出る吠えです。長く続く、いたずらをともなう、運動や関わりが足りない日にとくに増える、といった特徴が見られることがあります。要求や退屈の吠えは、満たされない時間が背景にあることが多いため、叱るより先に、運動・遊び・関わりの量を見直すことが対応の入り口になります。

タイプを見分けるヒント

タイプは「いつ・誰に・どんなときに」吠えるかで見分けます。下の表は、代表的なタイプときっかけ、見分けのヒントをまとめたものです。ひとつの犬が複数のタイプを併せ持つこともあります。たとえば、来客への警戒と、かまってほしい要求が、同じ場面で重なることもあります。決めつけず、ふだんのようすを観察する手がかりにしてください。

吠えのタイプおもなきっかけ見分けのヒント
警戒・知らせる来客・物音・外の人や動物玄関や窓のほうを向く・来訪のたびに出る
要求・注目かまってほしい・おやつ・遊び人を見て吠え・要求が通ると鳴きやむ
あいさつ・興奮人や犬を見たとき体がゆるみ・尾をふる
不安・分離留守・ひとりのとき出かけると始まる・在宅時は少ない
退屈・欲求不満運動不足・近づけない状況長く続く・いたずらもともなう
つられ吠えほかの犬の声外の犬が鳴くと連動して鳴く

「やめさせる」より「なぜ」を見る ― 引き金の観察

吠えへの対応は、「黙らせる」から入ると、たいていうまくいきません。先に「なぜ・いつ吠えるのか」を見極めるほうが、近道になります。観察は、特別な道具がなくても、今日から始められます。

引き金を書き出す

VCA動物病院は、吠えの原因・動機・吠えを強めている要因を見極めるために、ていねいな行動の記録が大切だと説明しています。吠えが「いつ・どこで・何の前後で」起きるかを、数日メモにとってみます。インターホンの音、外を通る人、留守の前、ごはんの前、家族が帰宅したとき。時間帯と場所、直前にあった出来事を書き出すと、ばらばらに見えた吠えにも共通のきっかけが浮かんできます。あわせて、吠えたあとに何が起きているか(人がかまう・おやつが出る・人が戻る・要求が通る)も見ます。吠えると良いことが起きていると、犬は「吠えれば伝わる」と学び、その吠えは強まります。逆に、吠えても要求が通らず、静かにしたときに良いことがあると学べば、吠えは少しずつ落ち着きます。記録は、感情的に叱ってしまう前に、ひと呼吸おいて状況を見るための道具にもなります。

叱責が逆効果になる仕組み

VCA動物病院は、不安や警戒から吠えている犬を、どなったり罰したりすると、かえって吠えと不安が増えやすいと述べています。人の大きな声は、犬にとっては「いっしょに騒いでいる」ように受け取られたり、こわい経験として不安を上乗せしたりします。注目を求めて吠える犬にとっては、叱られること自体が「かまってもらえた」というごほうびになることもあります。だからこそ、まず原因を見て、叱る以外の手を選ぶことが大切になります。

理解にもとづく向き合い方 ― 原因に手を当てる

吠えの理由が見えてきたら、原因に手を当てます。基本は「引き金を減らす」「望ましい行動を教える」の二つです。痛みやおどしで止める道具には頼りません。遠回りに見えても、これがいちばん犬にも人にも無理のない方法です。

引き金を減らす環境づくり

VCA動物病院は、吠えの引き金になる音や光景から犬を遠ざけるよう、家の環境を整える方法を挙げています。たとえば、外が見えないように窓を工夫する、玄関や窓から離れた場所に居場所を作る、覆いのあるクレートや音楽・テレビ・ホワイトノイズで外の音をやわらげる、といった工夫です。窓の下半分にすりガラス調のシートを貼る、レースのカーテンを引く、といった小さな工夫でも、外の動きが目に入りにくくなります。外を通る人に吠える犬なら、その人が見えにくくするだけで、吠えのきっかけ自体が減ります。留守番のあいだだけ外の音に反応する犬には、人がいるときと同じ背景の音を流しておくのも一つの手です。引き金を減らすことは、犬を我慢させるのではなく、そもそも吠える必要のない環境を用意することです。

望ましい行動を教える

米国獣医行動学会(AVSAB)は、ポジションステートメントのなかで、飛びつき・吠え・トイレといったよくある困りごとは、環境を適切に整え、望ましい行動を認めて伸ばすことで対応できる、と述べています。たとえば、来客に吠える犬には「マットで待てたらおやつ」を教えます。吠えるかわりにマットへ行く、という別の行動を用意しておくと、犬は迷ったときにそちらを選びやすくなります。要求吠えには、吠えているあいだは反応せず、静かになった一瞬を認めます。大切なのは、家族で対応をそろえることです。人によって応じたり叱ったりすると、犬は混乱し、吠えは長引きます。吠えという行動を罰でけずるより、してほしい行動を作って増やすほうが、結果として早く、犬との関係もたもてます。すぐに完璧を求めず、小さくできたところを認めて積み上げていきます。

吠え防止グッズに頼らない理由

市販の吠え防止グッズには、吠えると不快な刺激を出す首輪があります。ASPCAは、これらが大きな音・超音波・シトロネラの噴霧・弱い電気ショックなどを与える「罰の道具」であり、吠えの問題への第一選択としてはすすめられないと説明しています。AVSABも、痛みをともなう道具(チョークチェーン、プロングカラー、電気ショックの首輪)の使用は避けるべきだとしています。コーネル大学獣医学部の専門家も、ショックはひどく、超音波は数回しか効かず、シトロネラもましとはいえ罰には変わりない、と述べています。こうした道具は、なぜ吠えているのかという原因には手を当てません。不快な刺激で一時的に吠えが止まっても、不安や警戒そのものは残り、別の形であらわれることもあります。さらに、吠えと不快な刺激が結びつくと、その引き金となった来客や物音への不安を、かえって強めてしまうこともあります。根本の解決には、引き金を減らし、望ましい行動を教える地道な道のりのほうが近いのです。

吠えの対策は、その子の理由によって変わります。「インターホンに吠える」「留守番のあいだ鳴き続ける」「要求吠えが激しい」といった悩みも、引き金と背景を見れば、打ち手が見えてきます。自分の犬の吠えの理由がつかめないときは、専門家といっしょに整理するのも一つの方法です。K9 Harmony では、犬がいちばん落ち着ける自宅で、その子に合った吠えの向き合い方を組み立てます。まずは体験から、お気軽にご相談ください。

理由べつの対応 ― 要求・警戒・不安・退屈

ここまでの考え方を、よくある四つの吠えに当てはめてみます。どれも「理解してから対応する」点は同じです。共通して、強い不安をともなう吠えや、急な変化は、獣医や専門家に相談しながら進めます。

要求・注目の吠え

かまってほしい、おやつがほしい、遊んでほしい。こうした要求の吠えは、応じることで強まります。吠えているあいだは反応せず、静かになった一瞬に目を向ける・声をかける、という形で「静かにすると良いことがある」を教えます。吠え始めにこちらが反応してしまうと、犬は「もっと吠えれば応えてくれる」と学ぶため、応じるタイミングがかぎになります。反応をやめた直後は、犬が「あれ?」と一時的に吠えを強めることもありますが、ここで根負けして応じると逆効果になります。落ち着いた一瞬を待って認める姿勢を、家族で続けます。要求をすべて無視するのではなく、吠えていないときにこちらから関わるのがこつです。生活のリズムを整え、遊びや運動の時間を先に用意しておくと、犬は満たされ、要求そのものが減ります。

警戒・来客の吠え

来客やインターホン、外を通る人に吠えるタイプには、引き金をやわらげる環境づくりが効きます。外が見えにくいように窓辺を工夫し、玄関から離れた落ち着ける場所を用意します。チャイムの音に吠える犬には、音が鳴ったら「おやつ」を結びつける練習で、チャイム=身がまえる合図、というつながりをほどいていきます。家族が来客のたびにあわてて騒ぐと、その空気が犬の興奮を高めるため、人が落ち着いて対応することも大切です。インターホンや廊下の音が多い集合住宅では、刺激の管理がとくに役立ちます。住まいの近隣配慮はマンションで犬と暮らすにまとめています。

不安・留守番の吠え

ASPCAは、飼い主が出かけたときや、ひとりにされたときだけに出る吠えは、分離に関する不安によるものだと説明しています。留守のあいだだけ鳴き続ける、出かけるそぶりで落ち着かなくなる、といった場合がこれにあたります。対応は、ごく短い不在から少しずつ慣らす、出入りを大げさにしない、留守番を退屈させない、といった積み重ねです。出かける合図(鍵を持つ・上着を着る)を、外出と結びつけずに何度もくりかえして、合図そのものに慣らす方法もあります。ただし、分離の不安が強いと、犬はパニックに近い状態になり、自力ではなかなか落ち着けません。留守番のたびに激しく鳴く・物をこわす・粗相をするといったときは、独力で抱えこまず、獣医や専門家に相談します。留守番と分離の不安は奥が深いため、別の記事トイプードルの留守番でくわしく扱います。子犬のころからの慣らし方は子犬の社会化も参考になります。

退屈・欲求不満の吠え ・ つられ吠え

コーネル大学獣医学部は、退屈や孤独も吠えの理由に挙げています。運動や刺激が足りないと、犬は吠えやいたずらで気持ちを発散しようとします。散歩に加えて、においを使った遊びや知育トイ、簡単なトレーニングで頭と体を満たすと、退屈からの吠えは減ります。また、ASPCAが「ほかの犬の声を聞いたときだけ吠える」つられ吠えを挙げているように、外の犬の声が引き金になることもあります。これは性格の問題ではなく、犬の社会的な習性です。集合住宅で他の家の声が引き金になる場合の対策はマンションで犬と暮らすでも扱っています。

体調・痛み・加齢が関わる吠え ― 医療を見落とさない

吠えは、しつけや環境の問題だけでなく、体の状態が関わっていることもあります。とくに、急に吠えが増えた・いつもとちがう声で鳴く・夜に鳴くようになった、といった変化は、見落とさないようにします。

急な変化は受診の目安

VCA動物病院は、医療的な問題が発声に関わることがあり、とくに高齢の犬で起こりやすいと説明しています。痛みや体の不調が、吠えや鳴き声という形であらわれることがあるためです。これまで静かだった犬が急に吠えるようになった、特定の場所をさわると鳴く、といったときは、しつけの問題と決めつけず、まず動物病院に相談します。受診のときは、いつから・どんなときに・どんな声で・どれくらいの頻度で変わったかを伝えると、診察の手がかりになります。ふだんの吠え方を動画に撮っておくと、獣医師に見てもらえます。気になる変化や違和感があれば、様子を見すぎず、かかりつけの動物病院(獣医師)へ相談してください。ここでは病名を判断せず、まず体の問題がないかを確かめることが大切です。診断や治療は獣医師の役割です。

高齢犬の吠えの変化

年をとった犬では、吠えや鳴き方が変わることがあります。VCA動物病院が高齢の犬での医療的な関わりに触れているように、加齢にともなう体や感覚の変化が、声の出方に影響することがあります。夜に鳴く、理由がはっきりしないのに鳴く、といった変化が続くときは、加齢のせいと片づけず、動物病院でみてもらいます。原因に体の問題がないかを確かめたうえで、暮らしの環境や関わり方を整えていきます。シニア期の関わりは、その子の体調に合わせて、無理のない範囲で進めます。

吠えにくい暮らしをつくる ― 予防

吠えへの対応は、起きてからだけでなく、起きにくい暮らしを整えることでも進められます。社会化、刺激の管理、運動と知育。この三つが、吠えにくい土台になります。

子犬期からの社会化

子犬のうちに、人・音・場所におだやかに慣れておくと、見慣れないものへの過度な警戒や不安が減り、結果として吠えのきっかけも少なくなります。インターホン、掃除機、来客、エレベーター。生活で出会うものに、こわがらない範囲で、良い印象とともに少しずつ触れさせます。一度にたくさんではなく、その子が受け止められる量から始めるのがこつです。社会化の具体的な進め方は子犬の社会化にまとめています。時期を過ぎた成犬でも、あせらず時間をかけて慣らすことはできます。こわがるそぶりが出たら無理をせず、距離や音の大きさを調整します。

刺激を整える

外の人や物音が引き金になりやすい犬には、ふだんから刺激をやわらげておきます。窓の見え方を工夫する、外の音をやわらげる、落ち着ける居場所を用意する。VCA動物病院が挙げる環境の工夫は、対応だけでなく予防にも役立ちます。とくに集合住宅では、足音や声がひびきやすいため、室内を走りまわりすぎないよう、運動や遊びで発散させておくことも、結果として吠えの予防につながります。

運動と知育で満たす

コーネル大学獣医学部が退屈や孤独を吠えの理由に挙げているように、満たされない時間は吠えにつながります。毎日の散歩に加えて、においを使った探索遊びや知育トイ、おやつをかくして探させる遊び、短いトレーニングで、頭と体を使わせます。とくに、においをかぐ遊びは、犬が短い時間でも深く集中でき、運動だけでは満たされない満足感をおぎないます。散歩でも、歩く距離だけでなく、立ち止まってにおいをかぐ時間を大切にすると、気持ちが満たされやすくなります。体と頭が満たされている犬は、退屈からの吠えが自然と減ります。考え方の全体像は犬のしつけ入門に、手法の選び方は犬のしつけの手法に、退屈が背景にある拾い食いは犬の拾い食い・誤食にまとめています。あわせて読むと、なぜこの進め方が良いのかがつながります。

飼い始めの方からよくある質問

吠えについて、飼い始めの方からよく出る質問に、ここまでの内容をもとにまとめて答えます。

Q.「無駄吠え」はしつけで完全になくせますか?

吠えはコミュニケーションなので、ゼロにするものではありません。研究でも、吠えは場面によって意味のちがう声であることが示されています。目指すのは「完全に黙らせる」ことではなく、理由に応じて、困る場面の吠えを必要な範囲まで減らすことです。たとえば、来客を知らせる吠えはあってよいけれど、来客が入ってからも鳴き続けるのは減らしたい、というように、場面ごとに目標を分けて考えると現実的です。「無駄」と決めつけず、なぜ吠えるのかを見ることが、その第一歩になります。

Q. 吠え防止の首輪(電気・超音波・シトロネラ)は使ってよいですか?

第一選択にはすすめられません。ASPCAは、これらを「罰の道具」と位置づけ、吠えの問題への第一選択ではないとしています。AVSABも、痛みをともなう道具は避けるべきだとしています。原因に手を当てるものではないため、根本の解決にはつながりにくいのです。まずは引き金の見直しと、望ましい行動を教えることから始めます。

Q. 夜や留守中だけ吠えます。どうすれば?

留守中だけの吠えは、分離に関する不安のことがあります。短い不在から少しずつ慣らし、留守番を退屈させない工夫をします。あわせて、急に始まった・夜に鳴くようになった場合は、体調が関わっていることもあります。とくに高齢の犬では、医療的な要因が関わることがあるため、しつけの問題と決めつけず、動物病院に相談します。

Q. インターホンに吠えるのを減らすには?

引き金をやわらげる環境づくりと、音への印象を変える練習を組み合わせます。外が見えにくいよう窓辺を工夫し、玄関から離れた落ち着ける場所を用意します。チャイムが鳴ったらおやつ、をくりかえし、チャイム=身がまえる合図、というつながりをほどいていきます。叱って黙らせようとすると、かえって興奮や不安が増えることがあります。

まとめ ― 吠えの意味を知り、迷ったら専門家・動物病院へ

犬の吠えに「無駄」はありません。吠えは犬のことばで、要求・警戒・不安・退屈など、その子なりの理由があります。だからこそ、声で黙らせるより、なぜ吠えるのかを見て、原因に手を当てるほうが解決に近づきます。引き金を観察し、環境を整え、望ましい行動を認めて伸ばす。罰や吠え防止グッズには頼らない。これが、叱らない吠えの対策の背骨です。犬種としてのトイプードルと板橋での暮らしは、板橋区のトイプードルにまとめています。吠えの前ぶれとなるストレスサインの読み方は犬のカーミングシグナルにまとめています。場所やにおいと結びついた記憶の仕組みは犬の記憶の仕組みにまとめています。

急に吠えが増えた、いつもとちがう声で鳴く、夜に鳴くようになった、といった変化は、体の問題が関わっていることもあります。様子を見すぎず、動物病院に相談してください。考え方の全体像は犬のしつけ入門に、手法の選び方は犬のしつけの手法に、子犬期の関わりは子犬の社会化にまとめています。集合住宅での近隣配慮はマンションで犬と暮らすもあわせてどうぞ。一人で悩むときは、専門家の手を借りることも、立派な選択です。

参考にした情報(動物行動学・獣医団体)

この記事の説明と対策は、つぎの一次情報をもとにまとめています。本記事は査読論文・米国獣医行動学会(AVSAB)・獣医団体・大学などの一次情報をもとにしており、最新の内容は各公式で確かめてください。診断・治療は動物病院(獣医師)の役割です。気になる変化や違和感があれば、かかりつけの動物病院にご相談ください。出典の一覧は、下の「出典一覧」を開くと表示されます。

出典一覧(クリックで開く)

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