北区には、登録されている犬だけで9,217頭(令和5年度)が暮らしています。すぐそばを荒川が流れ、まちには坂や崖もあり、地震にゆれやすい低いところもひろがる――そんな北区で、いざというときに愛犬とどこへ、どうやって逃げるのか。この記事では、その答えを公式の情報にそってお伝えします。
先に大きな筋をお伝えします。北区は、すべての避難所(区立の小・中学校など)で、犬などのペットとの「同行避難」を受け入れています。ただし避難所では、ペットは人のくらすスペースとは分けたところで過ごします。そして北区でとくに知っておきたいのが、荒川がはんらんするような大きな水害のときは、「自宅の上の階ににげる」のではなく、「遠くの高台へ、早めに動く」という考え方です。
この記事では、北区の同行避難のしくみと、荒川・石神井川・地震という北区ならではのリスクを公式情報でたどりながら、ふだんから何をそなえておけばよいかを、犬のトレーニングの目線でまとめます。どの避難所や避難場所がひらくかは、災害のたびに区が決めます。だから、特定の学校の名前をおぼえるのではなく、「そのときは北区の公式サイトでたしかめる」というならわしを、そなえの出発点にしてください。
北区で暮らす犬たちと、水と地震のリスク
はじめに、北区というまちの成り立ちと、犬の数を見ておきます。そなえは「じぶんひとりの話」ではなく「まちぜんたいの話」だとわかると、見え方がすこし変わります。
登録犬だけで9,217頭が暮らす
東京都保健医療局がまとめた令和5年度の犬の登録頭数(東京都内区市町村別)によると、北区の登録頭数は9,217頭、狂犬病予防注射の頭数は5,441頭です。これは登録されている数で、じっさいに暮らす犬はもっといます。大きな災害が起きれば、これだけの世帯が、いっせいに「愛犬をどうするか」というおなじ問いに向きあいます。ひとりの用意が、まちの混乱をちいさくし、となりの避難者と、その先の一頭をもまもります。あなたのそなえは、あなたの愛犬をまもるだけのものではありません。
荒川・石神井川・崖、そして地震という複合したリスク
北区は、荒川ぞいの低いところと、坂や崖のある高いところが、となりあってできているまちです。だから災害のリスクも一つではありません。荒川がはんらんするような大きな水害、まちなかを流れる石神井川のはんらんや土砂災害、そして地震のゆれ――このいくつものリスクに、それぞれのそなえ方があります。ぼんやり「防災」と考えるより、じぶんの住むところがどのリスクに当たるのかを知るほうが、むだのないそなえになります。次の章から、公式の情報にそって、一つずつほどいていきます。
「同行避難」とは ― 北区の定義と、避難所・避難場所の違い
そなえの話に入る前に、二つの言葉のすれちがいをほどいておきます。「同行避難」という言葉の中身と、「避難所」と「避難場所」のちがいです。ここを先に知っておくと、いざというときにまよいません。
同行避難は「いっしょににげる行動」のこと
北区は災害時における避難所へのペットの同行避難のページで、「同行避難とは、災害発生時に飼い主が飼育しているペットと一緒に避難所まで安全に避難する行動(行為)のことをいいます。」と定めています。つまり同行避難は、「愛犬といっしょに安全なところまで動く」という行動をさす言葉です。
環境省の人とペットの災害対策ガイドライン(総説)も、「同行避難とは、ペットと共に移動を伴う避難行動をすることを指し、避難所等において飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではない。」としています。にげたさきで、人とおなじ部屋にずっといられることを約束する言葉ではない、ということです。同省は「『同行避難』が、ペットとともに安全な場所まで避難する行為(避難行動)を示す言葉であるのに対して、『同伴避難』は、被災者が避難所でペットを飼養管理すること(状態)を指す。」とも書いています。同行避難は「行動」、同伴避難は「状態」――にた言葉ですが、さす中身がちがいます。「いっしょににげる」ことと「ずっとおなじ部屋」は別だと、先に心づもりしておいてください。
「避難所」と「避難場所」はべつのもの
北区の避難所でのペット受け入れの案内では、「避難所」と「避難場所」を分けて説明しています。「避難所」は、一定のあいだ避難のくらしをおくる施設(区立の小・中学校など)です。いっぽう震災時の「避難場所」は、火事から身をまもるためのひろいところ(オープンスペース)をさします。ペットとの同行避難でまず思いうかべるのは、前者の「避難所」です。名前がにていて取りちがえやすいので、ここで分けておぼえておいてください。あとで見る北区の水害のしくみでは、この「避難場所」という言葉がまた出てきます。
北区の同行避難のしくみ ― すべての避難所で受け入れ、人とペットは分けて
ここからが北区の具体的なしくみです。区のページに、はっきりと書かれています。順に見ていきます。
すべての避難所で同行避難を受け入れる
北区は、「北区では、大規模な地震等が発生し、避難所(区立小・中学校等)が開設された場合、すべての避難所においてペットを連れて避難(同行避難)することが可能です。」と示しています。屋内での受け入れの案内でも、「北区では全ての避難所(主に区立小・中学校等)でペット(人に飼育されている犬・猫など)との同行避難を認めております。」とあります。区内のすべての避難所で受け入れる、と言いきっている点は、飼い主にとってこころづよい出発点です。ただし、どの避難所がひらくかは災害のときの状況しだいなので、開設のようすは、そのつど北区の公式サイトでたしかめてください。「うちの近くはあそこ」と一つに決めうちにせず、いくつかの行き先を頭に入れておくと安心です。
人とペットの生活空間は「完全に分ける」
受け入れの前提として、北区は「ペットの管理スペースと、ペットを飼われていない方の居住スペースを完全に分けて設ける必要性があり、避難をされる場合はケージに入れる、リードでつなぐ等をした上で、避難所運営本部の指示に従い、指定の場所(昇降口等)で管理していただく」としています。ペットのいる場所について区は、「原則は雨風がしのげる場所としており、屋内で避難者の居住スペースから離れている学校の昇降口等になることが多いです。」「避難所ではペットと飼い主は離れた別の場所に避難することになります。」と説明します。人とおなじ部屋ではなく、決められたべつのところで過ごすのが基本です。なお、「盲導犬・介助犬・聴導犬等の補助犬については、避難者居住スペースに入ることができます。」と、補助犬は例外としてあつかわれます。
世話は飼い主の責任、だから「分けて過ごす」意味がある
北区は、「原則として、飼い主が自身でケージ、ペットフード、水等の用意をしてください。」「餌やりや糞尿の始末、その他の飼養に関わる全ては飼い主が自身の責任で行なってください。」とし、犬については「狂犬病の予防接種を受けていること。」を条件にあげています。分けて過ごすのは、犬のためだけではありません。避難所には、動物がにがてな人、アレルギーのある人、小さな子どももいます。みんなが身をよせあうところだからこそ、たがいへの気くばりが要ります。犬が決めたところで静かに休めること、むやみに吠えないことが、そのまま周りの人をたすけます。ここが、あとで見る「ふだんのならし」の話にまっすぐつながります。
荒川の氾濫に備える ― なぜ「高台へ、早めの避難」なのか
北区のそなえで、いちばん北区らしいのが、荒川の水害への向きあい方です。ここは練馬や豊島とは大きくちがうところなので、公式の数字とともにていねいに見ておきます。
浸水は深く、長い ― 想定は5.5m・5日間
北区が公開している荒川の洪水についての水害リスクの資料では、荒川がはんらんした場合の浸水の深さの目安が最大で「5.5 m」、浸水がつづく期間が「5日間」と示されています。地域によっては、まわりを浸水にかこまれ、水が引くまで2週間以上つづくところもあります。この資料は、堤防の決壊などにより家屋の倒壊・流出が想定される地域に当たる場合があること、そして「水害リスクがあるため、自宅にとどまらず高台への避難が必要です。」と伝えています。5.5mといえば、二階の屋根に近い高さです。それだけの水が5日から2週間もつづくと考えると、そなえ方の軸が見えてきます。
「垂直避難」ではなく「遠くの高台へ、早めに」
大切な点なので、区の言葉をそのままお伝えします。北区は荒川の大規模な水害について、「できるだけ遠くの高台等へ早めの避難を行ってください。」「また、浸水継続時間が長く、救出が困難なため、自宅の上階等への避難(垂直避難)は危険です。」としています。つまり、水が深く長くたまる荒川の水害では、家の上の階ににげる「垂直避難」ではまにあわず、水につからないところ(高台)へ、はやめに動くことがもとめられます。愛犬をつれての移動は、思ったより時間がかかります。水が出はじめてからでは、犬を抱えての階段や人ごみの移動が、いっそうむずかしくなります。雨がつよくなる前、川の水位が上がる前に動きだすことが、犬にとっての安全にもつながります。
荒川の水害は前もって読める ― だから早く動ける
荒川のような大きな川のはんらんは、大型の台風が近づくなど、前もってきざしがつかめます。北区はこの点をふまえ、荒川がはんらんすると区が判断したときには「高台水害対応避難場所」をひらく、というしくみを用意しています。区は、「浸水期間が長時間にわたることや、台風の接近などは前もって予測が可能なことから、浸水の危険の少ないエリアだけに避難場所を開設します。」としています。だから飼い主も、台風の進路や区の情報をはやめに見て、「動くと決めたら早めに」を合言葉にしてください。夜や雨のなかで犬をつれて動くのは負担が大きいので、明るいうち・水が出る前の避難が、いちばん犬にやさしい選び方です。
石神井川と土砂災害 ― もう一つの「水害対応避難場所」
北区の水害は、荒川だけではありません。まちの中を流れる石神井川のはんらんや、坂・崖での土砂災害という、べつの顔もあります。北区は、この二つの水害を性格でわけ、避難場所も分けて用意しています。
荒川用と、石神井川・土砂用で避難場所が分かれている
北区には、荒川のはんらんにそなえる「高台水害対応避難場所」と、石神井川のはんらんや土砂災害にそなえる「水害対応避難場所」の、二つの水害への避難場所のしくみがあります。後者について区は、「石神井川の氾濫や土砂災害の発生が予想される場合に開設します。」としています。荒川の水害が広い範囲に深く長くおよぶのに対して、石神井川のはんらんや土砂災害は、被害の出るところが局所的で、水の引くのも比較的はやい、という性格のちがいがあります。おなじ「水害」でも、そなえ方と、にげる先が変わる、ということです。
近くに開く、だから「近所のどこ」を知っておく
区は、「浸水する時間が比較的短い見込みであること、集中豪雨などは、前もっての予測が困難なこと、被害が想定される区域が限定的であることから、被害の発生が懸念される場所の付近に避難場所を開設します。」としています。荒川用が「遠くの高台」なのに対し、石神井川・土砂用は「被害の出そうなところの近く」にひらきます。急な大雨は前もって読みにくいぶん、いざというときにすぐ動けるよう、じぶんの住むところがどちらのリスクに当たるのかを、ハザードマップでたしかめておいてください。愛犬と歩いてにげられる道すじを、ふだんのおさんぽのなかで見ておくと、いざというときに落ちついて動けます。坂や崖の近くに住む方は、雨がつづくときの地面のようすにも、はやめに気を向けてください。
地震のリスク ― 危険度の高いまちで、犬と生き延びる備え
水害とならんで見ておきたいのが、地震です。北区は、地震のゆれや火災に対して、東京都のなかでも注意のいる地域をかかえています。
総合危険度ランク5の地域が複数ある
東京都都市整備局の地震に関する地域危険度一覧(北区)によると、北区には、総合危険度がもっとも高い「ランク5」の町丁目が複数あります。建物のたおれやすさ、火災の起こりやすさでも、いちばん高いランクに当たるところがあります。これは、東京都が令和4年9月に公表した「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」にもとづくものです。総合危険度は、建物のたおれやすさと、火災の起こりやすさに、災害のときの活動のしにくさを合わせて出した指標です。荒川ぞいの低いところなどでは、地盤の関係でゆれやすく、危険度が高く出ています。
「早めの避難」と「分散したそなえ」を軸に
ランク5の地域があるということは、北区では「自宅がかならず無事」と決めてかからず、避難も選択肢に入れてそなえる、ということです。ここは、地震の総合危険度でランク5がない練馬区とは、そなえの軸がすこしちがいます。家具の固定やガラスの飛散ふせぎ、火を出さないくふう(ゆれたら火の始末をする、にげるときはブレーカーを落として、停電から復旧するときの火災をふせぐ)を整えつつ、水・フード・薬は自宅と持ち出し袋に分けておく「分散したそなえ」が役立ちます。地震のあとは、われたガラスや落ちたもので犬の足がきずつくことがあります。室内を歩く前に、犬用のくつや、抱きあげての移動も考えておいてください。停電で暗くなったときのために、犬をおちつかせる小さなあかりも、持ち出し袋に入れておくと安心です。
平時の備え ― 用意リストと、犬のための持ち出し袋
ここまでのしくみを、具体的な「ふだんのそなえ」に落としこみます。災害の日にきゅうに整うものではなく、きょうからすこしずつ積める用意です。
まず用意しておくもの ― フードと水は5〜7日分
北区は同行避難のページで、飼い主が用意しておくものとして、ケージ、ペットフード、水などをあげ、「ペットフード、水は少なくとも5日分(できれば7日分以上)は用意しておくことが必要です。」としています。荒川の水害では浸水が5日から2週間以上つづくところもあるので、この「5〜7日分」という目安には、はっきりした根拠があります。ふだん食べ慣れたフードを少しずつストックし、使いながら買いたす「回転そなえ」にしておくと、切らさずに新しさもたもてます。薬を飲んでいる子は、その予備も同じように多めに用意しておいてください。水も、犬のぶんを人とは別に見つもっておくと安心です。
迷子にそなえる ― 写真・迷子札・マイクロチップ
災害でいちばん多いわかれのひとつが、はぐれてしまうことです。北区は、「ペットの写真を複数枚持っていれば、迷子になった際の探す手がかりとなります。」とし、迷子札や首輪に飼い主の名前と連絡先を書いておくこと、そして「マイクロチップを装着させることも個体識別に非常に有効です。」を挙げています。マイクロチップについて環境省は、犬と猫のマイクロチップ情報登録のなかで「令和4年6月1日から、ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫について、マイクロチップの装着が義務化されています。」としています。すでに飼っている犬の装着は努力義務ですが、はぐれたときの再会をたすけます。中身の情報が古いままだと役に立たないので、引っこしや電話番号が変わったら、登録も新しくしておいてください。写真は、正面と横、体の模様がわかるものを、スマートフォンと紙の両方でひかえておくと確実です。
犬のための持ち出し袋を、玄関の近くに
人の持ち出し袋とはべつに、犬のぶんの袋も用意しておくと安心です。入れておきたいのは、5〜7日分のフードと水、飲んでいる薬、おりたたみの食器、予備のリードと首輪、うんちの始末袋、そうじ用のシート、においのついたタオル、おりたためるクレートやキャリー、そして小さなあかりです。北区も、予防接種の記録などが記された健康手帳があれば、あわせて持参すると良い、と案内しています。ワクチンの記録や、かかりつけの動物病院の連絡先をコピーして入れておくと、避難さきで役立ちます。犬はじぶんで荷物を持てません。玄関の近くなど、すぐ持ちだせるところに置き、中身は季節ごとに見なおしてください。荒川ぞいで「遠くの高台へ」動く地域の方は、この袋を背おって歩ける重さにしておくことも、だいじな点です。
クレートに慣らす・避難生活のストレスケア ― トレーナーの視点から
ここは、犬のトレーニングの専門として、いちばんお伝えしたいところです。北区の避難所では、ペットは昇降口などの決められたところで、ケージに入れて過ごします。その毎日をらくにするのは、平時のならしです。
クレートを「入るといいことがあるところ」に
北区も、「ケージに慣れていない動物は、ストレスが溜まってしまうため、普段からケージに慣れさせておくことも大切です。」としています。よくある失敗は、いやがる子をむりに入れて、いきなり扉をとじてしまうことです。これでは、クレートが「とじこめられるいやなところ」になってしまいます。おすすめは、はじめは扉を外したままにして、そばに来られたらほめ、鼻先を入れられたらほめ、中でおやつや食事をとらせる、という順です。そこまで平気になってから、扉をそっと数秒だけとじ、また開ける――というふうに、ごく小さく刻んでいきます。こうして「入ると良いことが起きる箱」に育てていきます。くわしい手順は、犬のクレートトレーニングの記事にまとめています。このならしは、防災にかぎらず、通院や車での移動、来客のときにも生きてきます。荒川の水害で「遠くの高台へ」動くときも、クレートに入れられることが、犬の安全と、まわりへの気くばりの両方をかなえます。
避難のくらしで、犬の不安のサインに気づく
避難のくらしは、犬にとっても、いつもとまるでちがう日々です。知らない人や動物がそばにいて、物音が絶えないなかで、ごはんを食べたがらない、からだを何度もなめる、小きざみにふるえる、といったようすが出ることがあります。これはわがままではなく、こころが張りつめているしるしです。しかってやめさせるのではなく、その子だけの休み場所をつくり、においのしみたタオルや使い慣れたおもちゃをそばに置いて、「ここは安心していい」という手がかりをそえてあげてください。ごはんやトイレの時こくを、なるべくいつもの流れに近づけることも、気もちのおちつきにつながります。人とペットが別々に過ごす避難所では、こうしたささいな工夫の積み重ねが、犬の負担を軽くします。
飼い主が落ちつくことが、いちばんの支え
犬は、飼い主の声のトーンやしぐさから、その気もちを読みとります。人がおだやかにいれば、犬もすこしずつほぐれます。だからこそ、飼い主じしんが落ちついていられるよう、ふだんからそなえを整えておくことが、めぐりめぐって愛犬をまもります。いつもとちがうようすがつづくときや、食べない・ぐったりするといったことがあれば、動けるうちにかかりつけの動物病院(獣医師)に相談してください。しつけやならしがうまくいかないときも、ひとりでかかえこまず、犬のトレーニングの専門家に相談するのも一つの方法です。ちいさな成功をたくさん積むことが、いざというときの落ちつきをつくります。
K9 Harmonyの「医療・防災手帳」で、愛犬の情報を一つに
ここまでの「愛犬の情報をひかえておく」というそなえを、もっとらくにつづけられるよう、K9 Harmonyでは「医療・防災手帳」というしくみを用意しています。
体験トレーニングの登録が、そのままそなえになる
K9 Harmonyの体験トレーニングを受けた方には、LINEで使える「医療・防災手帳」をお使いいただけます。初回の登録(オンボーディング)で入力した愛犬の情報が、そのまま手帳に反映されるしくみです。医療の記録や飲んでいる薬、かかりつけの動物病院、緊急の連絡先、にげる先を、スマートフォンのなかに一つにまとめておけます。ボタンをおすと、防災手帳・迷子ポスター・クレートタグのPDFを作れ、持ち出しのチェックリスト、家族と分けあえるQRコード、110・119への通報、にげる先までの道案内も使えます。通信がとぎれがちな災害のときも、オフラインでひらけるようにしています。荒川の水害で「遠くの高台へ」動くような北区では、にげる先をあらかじめ手帳に入れておけることが、そのまま早めの避難を後おしします。
この手帳に、公的な効力はありません
ここは誤解のないよう、はっきりお伝えします。この「医療・防災手帳」や、そこから作るPDFには、公的な効力はありません。あくまで、飼い主が自分のそなえを手もとで整え、必要なときに愛犬の情報をすぐ取りだすための道具です。避難所に入れるかどうか、行政の手つづき、鑑札やマイクロチップの登録といった公式のことがらは、これまでどおり北区や各窓口の案内が正となります。手帳は、その公式のそなえを、ふだんの暮らしのなかで続けやすくするための「手もとの控え」だと考えてください。まずは愛犬の情報を一つにまとめるところから始めたい方は、体験トレーニングの入り口からどうぞ。
よくある質問(FAQ)
Q. 北区では、どの避難所でも愛犬といっしょに避難できますか。
北区は「すべての避難所においてペットを連れて避難(同行避難)することが可能です。」と示しています。ただし、どの避難所がひらくかは、そのときの災害の状況しだいです。開設のようすは、災害のたびに北区の公式サイトでたしかめてください。近くの何か所かを、あらかじめ思いうかべておくと安心です。
Q. 避難所では、愛犬とおなじ部屋で過ごせますか。
基本は、人のくらすスペースとは「完全に分けた」ところ(昇降口など)で、ケージに入れて過ごします。おなじ部屋でずっといっしょ、とはかぎりません。補助犬(盲導犬・聴導犬・介助犬)は例外として、飼い主といっしょに過ごせます。
Q. 荒川の水害のとき、家の上の階ににげてもよいですか。
荒川の大規模な水害では、北区は「自宅の上階等への避難(垂直避難)は危険です。」とし、「できるだけ遠くの高台等へ早めの避難を行ってください。」としています。水が深く長くたまるため、上の階ではなく、水につからない高台へ、はやめに動くのがそなえの基本です。愛犬をつれての移動には時間がかかるので、雨や川の水位が上がる前に動いてください。
Q. 石神井川の水害と、荒川の水害では、そなえ方はちがいますか。
ちがいます。荒川は広く深く長く浸水するため「遠くの高台へ」、石神井川のはんらんや土砂災害は局所的で水が引くのもはやいため、「被害の出そうなところの近く」に避難場所がひらきます。じぶんの住むところがどちらのリスクに当たるかを、ハザードマップでたしかめておいてください。
Q. うちの子は吠えやすいのですが、避難所でめいわくになりませんか。
避難所では人とペットの生活空間を完全に分け、ケージやリードで管理します。吠えやトイレ、クレートで休むことは、ふだんのトレーニングですこしずつ整います。きょうからの小さな練習が、いざというときの安心につながります。ひとりでなやまず、専門家に相談するのも一つの方法です。
Q. まず何から始めればよいですか。
自宅が荒川・石神井川どちらの浸水リスクに当たるかをハザードマップでたしかめること、クレートに慣らし始めること、フード・水・薬を5〜7日分そろえること、写真・迷子札・マイクロチップで飼い主の印を用意すること――このよっつから始めてください。一度にぜんぶではなく、きょうはひとつ、と決めて積むのがつづくコツです。
まとめ ― 北区のリスクを知り、今日から一つずつ
北区は、区内のすべての避難所で犬などとの同行避難を受け入れています。避難所では、人とペットの生活空間を完全に分け、ケージやリードで、昇降口などの決められたところで過ごし、世話は飼い主の責任で行います。だからこそ、ふだんのならしとクレートへの慣れ、迷子対策、5〜7日分のそなえが、そのまま避難所での安心につながります。
そして北区でとくに心にとめておきたいのが、荒川の水害では「上の階への垂直避難」ではなく「遠くの高台へ、早めの避難」だということ、石神井川のはんらんや土砂災害はまた別のそなえがいること、地震では危険度の高い地域があるぶん「早めの避難と分散したそなえ」が要る、ということです。北区で犬とくらす全体像は北区で犬と暮らすための記事にまとめています。愛犬の情報を一つにまとめるそなえは、体験トレーニングの登録から始められます。きょうの小さな一歩が、いざというときの大きな支えになります。
参考にした情報(公的機関・環境省・東京都・北区)
本記事は、環境省・北区・東京都などの一次情報をもとにしています。最新の情報は各公式サイトで確認してください。避難所・避難場所の開設や受け入れの可否は、災害のたびに北区が判断します。診断・治療は獣医師(動物病院)の役割です。気になる症状や違和感があれば、かかりつけの動物病院にご相談ください。
- 北区『災害時における避難所へのペットの同行避難(すべての避難所で受け入れ・用意するもの・補助犬・迷子対策)』(参照:2026-07)北区・ペットの同行避難
- 北区『避難所でのペット受け入れ(完全に分けて管理・昇降口等・避難所と避難場所の区別)』(参照:2026-07)北区・避難所でのペット受け入れ
- 北区『高台水害対応避難場所・水害対応避難場所(荒川用と石神井川・土砂用の二つのしくみ)』(参照:2026-07)北区・高台水害対応避難場所と水害対応避難場所
- 北区『我が家の水害リスク(荒川の洪水・浸水5.5m/5日間・遠くの高台へ早めの避難・垂直避難は危険)』(参照:2026-07)北区・荒川の水害リスク資料(PDF)
- 環境省『人とペットの災害対策ガイドライン(総説・同行避難と同伴避難の定義)』(参照:2026-07)環境省・総説PDF
- 東京都都市整備局『地震に関する地域危険度一覧表(北区・第9回/令和4年9月公表)』(参照:2026-07)東京都・北区の地域危険度一覧
- 東京都保健医療局『令和5年度 犬の登録頭数・狂犬病予防注射頭数(東京都内区市町村別)』(参照:2026-07)東京都・犬の登録頭数
- 環境省『犬と猫のマイクロチップ情報登録について(令和4年6月1日から装着義務化)』(参照:2026-07)環境省・マイクロチップ情報登録