K9 HARMONY 体験予約

犬と引っ越す ― 荷造りの日から新居の一週間までの整え方

引っ越しの翌日、家じゅうを落ち着きなく歩き回る。夜になっても寝つかない。今まで失敗しなかった場所で粗相をする。引っ越しのあと、そういうご相談をよくうかがいます。犬にとって引っ越しが大ごとなのは、家が変わるからというより、覚えていたものが一度に入れ替わるからです。この記事では、荷造りを始める日から新居の一週間までを、順にお伝えします。

引っ越しで犬が落ち着かなくなる理由 ― 変わるのは景色ではなくにおいと音

人は新居を、間取りや日当たりで覚えます。犬はそうではありません。玄関のにおい、廊下の床の感触、隣の部屋から届く生活音、外を通る車の間隔。そうしたものの集まりとして、その場所を知っています。

引っ越しでは、その全部が同時に入れ替わります。手がかりがひとつも残らない状態で、いきなり「今日からここです」と言われる。落ち着きなく歩き回るのは、性格の問題ではなく、手がかりを探しているからです。

だから、こちらができるのは、手がかりを持っていくことと、変えなくていいものを変えないことです。アメリカンケネルクラブ(AKC)も、引っ越しのときは犬の古い持ち物を必ず荷造りに入れること、この時期に新調しないこと、新居に旧居のにおいがする物があると犬は安心することを述べています。

引っ越す前にしておくこと ― 荷造りの日から始まっている

準備は、引っ越しの数日前から始められます。K9 Harmonyのトレーニングでお伝えしているのは、次のやり方です。

引っ越しの数日前から、いま使っている寝床に、タオルやブランケットを敷いておきます。そのまま何日か寝てもらい、その子のにおいをしみこませます。そして引っ越しの日、洗わずに新居へ持っていき、新しい寝床の上に敷きます。

新居に着いたその子が、最初に体を預ける場所に、自分のにおいが残っている。それが「知っている場所だ」という手がかりになります。当日に新品を用意しても、その子のにおいは付いていません。洗ってしまっても同じです。数日前から敷いておくのは、においを十分に移すためです。

あわせて、次のものも荷造りのときに分けておきます。

  • 使っている寝床、クレート、毛布。新居ですぐ出せるように、一つの箱にまとめておきます。
  • 食器と、いつものフード。切りかえの時期をこの週に重ねません。
  • 散歩の道具。首輪やハーネスも、使い慣れたものをそのまま使います。
  • 迷子札と、マイクロチップの登録住所。新しい住所への変更を、引っ越しの前後で忘れずに行います。

クレートを新居での居場所にする場合は、引っ越しより前に、その中で休める状態にしておくと当日が楽になります。進め方はクレートトレーニングの記事にまとめています。

新居に着いた日 ― 家に入る前に、まず歩く

まず、荷物を運び出す日についてです。AKCは、人や業者が箱を運んでいるあいだ、犬を友人や近所に預けること、それができない場合は静かな部屋かクレートに入れておくことをすすめています。開けっぱなしのドアから出てしまう事故も、この日に起きます。

そして、新居に着いたときです。ここで順番をひとつ変えてみてください。家に入る前に、まず散歩をします。「新居で落ち着いてから散歩」ではなく、「散歩をしてから新居に入る」です。

理由は三つあります。

  • 移動でたまったものを、先に出せます。車や電車で運ばれたあと、その子の体には動きたい状態が残っています。それを抱えたまま知らない家に入ると、部屋じゅうを歩き回る形で出ます。先に歩いて排泄も済ませておけば、家に入った時点で休む側に傾きます。
  • 新居の周りのにおいを、先に知ることができます。家に入る前に周辺を歩けば、この土地のにおい、ほかの犬の跡、音の出どころが分かります。そのうえで家に入ると、未知なのは家の中だけになります。順番が逆だと、家も外も、いっぺんに未知のままです。
  • 家の中で最初の粗相をさせずに済みます。新居の一日目に室内で排泄すると、その場所がトイレとして残ります。外で済ませてから入れば、家の中の最初の記憶がそこになりません。

ひとつ、注意があります。ワクチンの接種がまだ終わっていない子犬の場合です。地面を歩かせる代わりに、抱っこでの散歩という方法があります。抱えたまま、新居の周りのにおいと音にふれさせます。ただし、どの段階でどこまで外に出してよいかは、その子の接種の状況と地域の事情で変わります。かかりつけの動物病院(獣医師)にご確認ください。ワクチンが終わる前の過ごし方は子犬の社会化の記事にまとめています。

新居の一日目 ― 家具より先に、その子の居場所を決める

家に入ったら、段ボールを開ける前に、寝床を置きます。持ってきた布を敷いて、その子が休める場所を先に作ります。人が片づけを始めるのは、そのあとです。

置く場所にも、こつがあります。AKCは、可能なら家具を旧居と似た配置にし、犬の持ち物も同じ関係の場所に置くことをすすめています。寝床はリビングに、食器は冷蔵庫のそばに、というように、部屋の中での関係を保ちます。間取りが違っても、「テレビの見える位置に寝床」「台所の入口に食器」といった関係は再現できます。

日課も変えません。AKCは、いつもの日課をできるだけ早く戻すことをすすめています。ごはんの時間、散歩の時間、寝る時間。片づけが終わっていなくても、その三つだけは元のままにします。

ここで、よかれと思ってやりがちなことをひとつ挙げます。落ち着かないその子を見て、安心させようとおもちゃを渡すことです。これは避けてください。

うろうろしている、鳴いている、そわそわしている。その状態のときに人がおもちゃを差し出すと、いま出している状態と、いいことが結びつきます。また、おもちゃは気持ちを上げる方向に働きます。この日にその子へ必要なのは、休むことです。そして人の側にも作用があります。渡すとその場は気がまぎれて見えるため、本当に要ること ― においのついた寝床、静かな場所、いつもと同じ時間割 ― が後回しになります。

渡すのは、落ち着いているときです。自分から伏せている、体の力が抜けている、呼吸が静かになっている。そういう状態が続いているときに、差し出さずに、そっとそばに置きます。新居では、着いた直後ではなく、人の出入りが落ち着いて、その子が一度自分から横になったあとです。日をまたいでもかまいません。

種類も選びます。引っ張り合いや、投げて追わせるものは、この時期には向きません。噛んで時間をかけるもの、においで探すもの、フードを入れて転がすものであれば、落ち着く方向に働きます。選び方は犬のおもちゃの選び方の記事に、においで探す活動の作り方は興奮しやすい犬の落ち着かせ方の記事にまとめています。

新居の床がすべる、換気扇の音が大きい、といったことを怖がる場合もあります。VCA動物病院は、音や床を怖がる場合にも、反応が最小限で済むごく弱い形から始めて、おいしいものと組み合わせていくやり方が使えると述べています。こわがりや興奮のサインが出たら、その回は続けません。

集合住宅で始める暮らし ― 鳴き声・共用部・近隣への配慮

板橋区の住まいの未来ビジョン2025 住宅白書によれば、平成25年住宅・土地統計調査の時点で、区内の住宅の78.3%が共同住宅です。引っ越し先が集合住宅であれば、新しい暮らしは、隣や上下の部屋との関係と一緒に始まります。

引っ越し直後は、犬がもっとも鳴きやすい時期です。環境省の家庭動物等の飼養及び保管に関する基準は、犬の飼い主に対して、頻繁な鳴き声などの騒音や、ふん尿の放置によって、周辺の住民の日常生活に著しい支障を及ぼさないよう努めることを求めています。落ち着くまでのあいだ、次のことを見ておいてください。

  • 寝床を、玄関から離す。共用廊下の足音やエレベーターの音が届く位置だと、そのたびに反応します。
  • 留守番を、この週にいきなり長くしない。片づけで出入りが増える時期です。ひとりにする時間は、短いところから戻します。留守番の考え方は犬の留守番の記事にまとめています。
  • 共用部での歩き方を決めておく。エレベーターに乗るときは抱く、廊下では引き綱を短く持つ。最初にやり方を決めておくと、その子も迷いません。
  • 管理規約を読み直す。ペット可の物件でも、頭数、体重、共用部での抱っこの扱いが決められていることがあります。
  • あいさつのときに、犬を前に出さない。近隣へのあいさつは人だけで行い、犬が苦手な方がいる前提で始めます。

集合住宅での暮らし方全般はマンションで犬と暮らす記事に、板橋区での届け出や施設の情報は板橋区で犬と暮らす記事にまとめています。転入したら、犬の登録の住所変更も必要になります。

模様替えでも同じことが起きる ― 動かしてよいもの、動かさないもの

引っ越しほど大きくなくても、家具の配置を変えただけで落ち着かなくなる子がいます。理由は同じです。覚えていた手がかりが、いくつか同時に消えるからです。

模様替えのときは、動かしてよいものと、動かさないものを分けます。

  • 動かさない:寝床、クレート、食器、水、トイレ。この五つは、家の中での位置関係を保ちます。
  • 動かしてよい:ソファ、テーブル、棚。ただし、寝床から見える景色が大きく変わる配置は、一度に行いません。
  • 新調しない:この時期に寝床やクレートを買い替えません。AKCも、引っ越しのときは新調する時期ではないと述べています。
  • 一度に全部を変えない:数日に分けると、その子が確かめる時間ができます。

模様替えのあと、落ち着かない日が続くようなら、寝床の位置を元に戻してみてください。それで収まるなら、原因は配置です。

落ち着かない日が続くときに ― 見直すところと、受診の目安

新居に移って数日は、粗相、夜鳴き、食欲の低下、便のゆるみが出ることがあります。まず見直すのは、その子の性格ではなく、配置と時間割です。

  • ごはんと散歩の時間が、引っ越し前とずれていないか。
  • 寝床が、人の動線や玄関の音の届く場所になっていないか。
  • ひとりにする時間が、急に長くなっていないか。
  • 片づけのあいだ、声をかけたり呼んだりする回数が増えていないか。

粗相が出たときは、叱らないでください。アメリカ獣医行動学会(AVSAB)は、教える方法は、望ましくない行動を罰するより、してほしいことを教えることに焦点を当てたときにもっとも効果的であると述べています。トイレの場所は、迎えた最初のころと同じように、成功したときに知らせる形で作り直します。進め方は犬のトイレトレーニングの記事にまとめています。

体のほうも見ておきます。下痢が続く、吐くことがくり返される、食べない日がある、ぐったりしている。こうしたようすがあれば、環境のせいだと決めずに、動物病院(獣医師)にご相談ください。転居先で新しくかかる病院を探しておくことも、引っ越しの準備のひとつです。

小さなサインを読めるようになると、上がりきる前に手を打てます。顔をそむける、体を固くする、しきりに舌なめずりをする。読み方は犬のカーミングシグナルの記事にまとめています。

まとめ

引っ越しで変わるのは、間取りではなく、その子が覚えていたにおいと音です。だから、持っていけるものは持っていき、変えなくていいものは変えません。数日前から寝床に敷いた布を、洗わずに新居へ。着いた日は、家に入る前にまず歩く。中に入ったら、段ボールより先に寝床を置く。落ち着かないからといって、おもちゃで気をまぎらわせない。ごはんと散歩と就寝の時間だけは、元のままにする。

数日で戻る子もいれば、二週間かかる子もいます。急がずに、その子が自分から横になるのを待ってください。

引っ越しの前後で落ち着かない、鳴き声が心配、留守番が崩れた。そうしたお悩みは、体験トレーニングでも一緒に取り組めます。ご予約は予約ページ、または LINE からどうぞ。

住まいに合わせて整えるところから始められます。費用の考え方は出張ドッグトレーニングの料金相場に、初回の進み方は体験当日の流れにまとめています。

体験トレーニングを予約する(90分・3,980円)

出典一覧(クリックで開く)

AKC「Ways to Make Moving Into a New Home With a Dog Less Stressful」(2026-08-10 参照): https://www.akc.org/expert-advice/home-living/moving-with-dog/ /逐語「Be sure to pack your dog’s old belongings. This isn’t the time for a doggy makeover. It will reassure your dog to have items in the new location that smell like your old home.」「Get your dog back to their usual routine as quickly as possible.」「If possible, set up your furniture in the new home in a similar pattern to ease your dog’s response to the change. Try to place your dog’s belongings in the same places, such as a bed in the living room and dishes beside the fridge.」「While you or movers are carrying the boxes from your home, plan a play date for your dog at a friend or neighbor’s house…If that’s not possible, place your dog in a quiet room or in their crate.」(犬の古い持ち物は必ず荷造りに入れる。新調する時期ではない。旧居のにおいがする物が新居にあると犬は安心する。いつもの日課をできるだけ早く戻す。家具と犬の持ち物は旧居と似た配置に。運び出しの日は預けるか静かな部屋・クレートへ)。

環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号・最終改正 令和4年環境省告示第54号・2026-08-10 参照): https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_r02_21_1.pdf /逐語「犬の所有者等は、頻繁な鳴き声等の騒音又はふん尿の放置等により周辺地域の住民の日常生活に著しい支障を及ぼすことのないように努めること。」(第4 犬の飼養及び保管に関する基準3)。★努力義務として書かれた基準。

AVSAB「Position Statement on Humane Dog Training」(2021)(2026-08-10 参照): https://avsab.org/wp-content/uploads/2021/08/AVSAB-Humane-Dog-Training-Position-Statement-2021.pdf /逐語「Training methods are most effective when they focus on teaching the animal what to do, rather than punishing them for unwanted behaviors.」「Common training issues such as jumping, barking, and housetraining can be managed by arranging the environment appropriately and reinforcing desirable responses.」(してほしいことを教える形がもっとも効果的。飛びつき・吠え・トイレは環境調整と強化で扱える)。

VCA Animal Hospitals「Introduction to Desensitization and Counterconditioning」(Ellen Lindell, VMD, DACVB ほか・2026-08-10 参照): https://vcahospitals.com/know-your-pet/introduction-to-desensitization-and-counterconditioning /逐語「Whether your pet is fearful of noises, flooring, steps, situations, or handling (e.g., grooming, brushing, hugging, lifting), desensitization and counterconditioning can change the fearful or anxious mood.」「Desensitization begins with a very low intensity of exposure – low enough that any reaction is minimal.」「Do not continue with a session if your pet shows signs of fear or arousal.」(音・床・段差・扱われることを怖がる場合にも使える。反応が最小限で済む弱い形から始める。こわがりや興奮のサインが出たら続けない)。

板橋区『住まいの未来ビジョン2025 住宅白書』第2章 住宅ストック(原資料=平成25年住宅・土地統計調査・2026-08-10 参照): https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/122/attach_90477_11.pdf /逐語「『一戸建て』の専用住宅が20.3%(54,420戸)、『共同住宅』は78.3%(209,880戸)となっています。」

NEXT STEP|次の一歩へ

気になることがあれば、まずは体験から。
愛犬とのこれからを、一緒に考えます。

営業: 10:00–22:00(木曜は13:00から/水曜定休)
070-9043-1109 / info@k9-h.com